これは新橋の一角に存在するこ汚い雀荘での出来事について記した日記である。→前半
以下については麻雀に流れはある前提で書く。
麻雀における所謂「流れ」について、敢えて端的に極論すると「前局までの結果が今局に影響を与えるか否か」であろう。理屈で考えれば、両者はそれぞれ個別の事象に過ぎない筈だ。
序盤戦
これだけ長くセットで打っていると一度や二度は打った事のある相手ばかりだが、今回は新顔Tが混ざっていたので、序盤はこの男がどのような打ち手が分かるまではかなり慎重に進めた。
何せ前述した通り、2022年の8月にボロ負けしてからおれはネット麻雀も含めて一度も麻雀を打っていないのである。符計算はかなり怪しくなっているし、下手すると上家と下家の席順すら間違えそうだ。という事で今回はトータル-100程度に収まれば良いだろうという気持ちで望んだ。
……上記は言うまでもなく負けた時に痛んだ自分の心を慰めざるを得ない状況に陥った時に備えた偽りのタテマエで、やるからには勝ちたいに決まっている。「出る前に負ける事考えるバカいるかよ」と猪木も言ってる。
今回の序盤の進め方
ルール上、スタンダードに場所替えは2半荘に1度なので、2半荘が一区切りとなる。最初の2半荘は久し振りの麻雀を思い出すための参加料としてある程度のマイナスは許容し、大きな勝負に出ないようにして静かに大人しく滑り出した。とにかく序盤はラスだけは引かないようにすれば良いという勝負に対して消極的な考えである。
開幕直後のお互いにフラットな状態であれば、相手の立直には頭を下げてベタ降りし、手配を短くしたくないので鳴きは基本入れず、立直合戦がぶつからないように注意すれば、(要するに逃げているだけでマトモに勝負に参加してないので)大体は(勿論例外はある)ラスは引かずに済む。予定通り半荘2回で立直への放銃はゼロで終えた。無論、ベタ降りしているだけではなく、焼き鳥を喰らわぬように行けるチャンスは逃さずきちんと和了る。
この日は本部長の調子が良くて大きな手をよくツモり、連続トップであった。おれは前述の通り大人しく頭を垂れていたので既に-45(3着:-24, 3着:-19)である。まあこのくらいならトップを一発取れば返せるので許容範囲と考えよう。
観察する
安くはない参加料を払って序盤でやりたかったのは、以下の2点である。
- 4ヶ月以上麻雀から離れていた事で失われた感覚(直感)の恢復。
- 新顔Tがどの程度打てるかの観察。
どちらについても十分な成果を上げられた。2については以下のような点を観察した。
- 牌の扱い方について。
牌を扱う手付きを見れば、相手が(ほぼ)ネット麻雀しか知らないのか、実際にある程度は実物を使って打った経験があるのかは直ぐ分かる。両者はルールは同じだが(優劣ではなく)別物である。 - 相手の立直に対してどのように対応するか。立直が早い場合、遅い場合はそれぞれどうか。立直に対して積極的に追い掛け立直を打ってくるか。
- 面前と仕掛けがどの程度の割合か。打点と速さのバランスはどうか。役牌は一鳴き二鳴きのどちらが多いか。
- どの程度の攻めっ気があるのか。勝負手なら愚形でも必ず立直をするか。ダマを織り交ぜるか。
- 全体の点数状況を読まない一見非合理な仕掛けや動きをするか。大明槓や加槓など場のリスクを増す打ち方をするか。
- 相手の仕掛けに対してどの程度の警戒をするか。
- 特に南場において順位が変わらない安い和了をどの程度許容しているか。それについて場当たり的ではなく自分の中で合理性のある判断をしているか。
- 結果に対して感情的になるか。負けを取り戻そうとして打ち方が荒くなる事があるか。
思い付くままに適当に列挙した。勿論それぞれ正解があるものではない(強いて言えば常に勝者が正しい)し、特に相手の内面については実際の所がどうなのかは知る由もないが、注意して見ていれば様々な情報が得られる。
結果、得られた情報を元にし、暫定的に以下のように評価した。
- 少なくとも下手ではないが上手くはない。打撃大好き立直大好き。流れに乗れば稼ぐタイプ。
→明確に流れに乗るまで驚異無し。過度な警戒は不要であり、基本的には無視して構わないと判断する。
中盤戦
半荘2回で慣れてきたので徐々に攻めに転じる。何もしなければツモられ続けてただ削られるだけだ。
交通事故のような放銃は避けられていたので、流れは悪くないだろう。本部長の親立直にカン三萬で追い掛け立直をして一発で仕留めた所で、勝負に転じても良いだろうと判断した。
結果、2着:+7 → トップ:+49 → トップ:+60 → トップ:+54 と一気に+127まで数字を積み上げた。
おれは学生時代から散々麻雀を打っているのでもう25年になるし、同卓している人間も似たようなものだろう。そうなるとかなり暴論になるが、細かな技術的にはもう大して差は無いと考える。
補記すると、幾名かは若干技術的に劣っていると思われるメンバーもいるが、それでもある程度は勝負になるのが麻雀の面白い所である。今回のメンツには含まれていないのでこの話題についての深掘りは避ける。
そのため、主な着眼点は自分を含めた各個人の状態になる。具体的には、自分が今どんな状態にあるのか、誰になら勝てるのかという考え方を重視するのだ。勝てる所となら戦う。所詮は素人同士の麻雀なのでミスが多く、ツキは簡単に行ったり来たりする。なんという事だ。慎重に避けてきたのに遂にツキというオカルティックな単語を出してしまった!
ルールについて
この会でのルールについて紹介しておく。もっと細かく定義しているがざっくりと書く。内容的には標準的だと思う。
余り麻雀を知らない人の為に、幾つか注釈も入れている。
- 東南戦。南4局終了時点で全員が30,000点以下の場合、西入する。
西入した場合は、誰かが途中で30,000点を超えた場合でも西4局まで打ち、西4局終了時点で再度北入の判定をする。 - 25,000点持ちの30,000点返し。
※つまりトップ賞のオカは+20となる。 - ウマはワンツー。つまり、トップ:+20/2着+10/3着:-10/ラス:-20。
ウマは小さ目であり、3着とラスの間にそこまで差がない。2着と3着だけは20の差があるため、ややアンバランスだと個人的には思っている。ワンスリーでも良いのでは。
ウマ(+20)とオカ(+20)を合わせ、トップには無条件で+40が付与される。トップを取らなければ勝てないルールだ。 - 食いタン後付けあり。一発裏ドラあり。赤ドラ3枚(5筒・5萬・5索)あり。
- チップあり。チップは1枚+2相当。一発・裏ドラ・役満・焼鳥でのみ発生。(赤ドラには付けない)
- 焼鳥あり。半荘を通じ一度も和了が無い場合はチップ3枚を場に支払う。
-6相当なのでペナルティとしては小さい。 - トビあり。箱下精算あり。トビのペナルティなし。
※例えば残2,000点で12,000点の手に振り込んだ場合、-10,000点となり半荘終了となる。
ただ、トビになったからといってそれ自体のペナルティ(-10など)は無い。気軽に飛べる。 - 割れ目無し。(場が荒れるので)
割れ目とは、その局で割れ目に当たった人間は、点数を倍貰い倍払う。 - ダブロンあり。三家和は流局とする。
- 四風連打は強制流局。また、九種九牌は流局・続行の選択が可能。宣言した場合のみ流局。
- 役満は純粋な複合のみダブル、トリプルとして扱う。国士無双13面、四暗刻単騎はシングル扱い。
大車輪や百万石等のローカル役は認めない。十三不塔も無し。
なお、役満を和了った場合は、ツモでチップ5枚ずつ、ロンで10枚を受け取る。 - 流し満貫あり。通常の満貫和了扱いとする。
- オープンリーチ無し。
連発する奴がいると読み合いの興が削がれ、また、オーラスでの逆転が易しくなってしまうため。
後半戦
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 合計 | |
順位 | 3 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 3 | 4 | 2 | 3 | 1 | 平均2.18位 |
得点 | -24 | -19 | +7 | +49 | +60 | +54 | -22 | -37 | +4 | -13 | +51 | +110 |
後半戦について書く前に、先に結果を表に纏めておく。
3連続トップを取った後は、それまでの勢いが嘘のように流れを失って凪状態になった。7半荘目は2局目に軽く2000点を和了っただけで、後は何もできずに-22で終了。何が失調の原因だったかは分かりようもないが、長い勝負なのでこういう時もある。慌てても仕方がない。幸い今日は中盤戦の蓄えがある。
8半荘目はそのままの流れを引きずり初のラスを取り-37。勝ちを大分吐き出してしまい+68となった
今日は全体的に平たい場だ。8半荘まで打ったが、誰かが極端に勝ったり負けたりはしていない。誰かが大負けする時はこの時点で-150~-200まで凹んでいる場合が多い。こうなると大抵は負けを取り返そうとして打牌が荒くなるので、無茶な勝負に出てしまって更に傷が深くなる事が多い。大きなマイナスを背負って冷静に打つのはかなり難しい。
おれは全員が安定した状態で冷静に打てている場が好きだ。個人的には余り大勝ちも大負けもしたくはない。理想的にはゲーム代を払ってプラマイゼロくらいで終われば良いのだ。平和が一番。おれは麻雀ではただ真剣勝負をして楽しみたいのであって、誰かが極端に大きく勝ったり負けたりして空気が悪くなるのは嫌だ。
終盤戦
麻雀も12時間ぶっ通しという長丁場になると、皆終盤戦は疲れてミスが多くなるし打牌が荒くなる。だが、ミスが多くなっても思慮深く慎重に打っていた序盤と点棒の価値は変わらない。最後まで丁寧に丁寧に打ち、最後の11半荘目はトップを取って無事に+110で終了した。22:00を回っていたので本日はこれでお開きである。
終戦
帰る間に煙草を吸いたいので、精算後は他のメンツとは店内で別れて店内の喫煙所で一服してから店を出る事が多い。この雀荘では各自の席では加熱式煙草の喫煙のみが許可されているので、紙巻き煙草は雀荘の片隅にある狭い喫煙場所で吸う必要があるのだ。麻雀と煙草は切っても切り離せない関係のように思えるが、最近はこのような型式の店舗が多いようだ。何せパチンコ屋ですら紙巻き煙草を吸えない店が増えてきたようだしな。
麻雀を打った後、この雑居ビルの短い階段を降り終わるまでに色々な事を考える。勝った時は新橋で少し飲んで帰りたいものだが朝から夜まで麻雀を打っていると心身共にくたくたに疲れ果てており、一刻も早く家に帰りたいという気持ちになっている。
都営浅草線 新橋駅
来る時はJRだが帰りは都営浅草線を使う事が多い。