今回は2023-09-09から2日間に渡って開催された入間の乱 THE LASTに参加してきたのでその旅日記を書く。
2023年3月に開催された入間の乱 百花繚乱の旅日記はこちら。記憶の中では昨年に参加した事になっていたが、日記を見返すとまだ半年前の事だった。人間の記憶というものは信用できないものだ。
前日
8月末に仕事で全く想定していなかった方向からトラブルが発生し、なんとか鎮火に向けた道筋が見えたかと思った所でまた火の手が上がって迎えた週末の夜であった。自己の裁量が及ぶ範囲のトラブルであればどうにでもできるのだが、得てして面倒な問題というものはステークホルダーが多いものである。逆説的には利害関係者が多いから面倒な問題になるとも言える。
そうなるとトラブルに対応する方向性や何らかの結論めいたものが出るまでに手を動かせず待たされる時間が多くなり、待たされる側はストレスばかりが溜まってゆく。出発前日の夜はその不確定性が最大に高まった状態だったので既に気持ちは疲れ果てており、仕事が終わって仕事用のPCをシャットダウンした後はぐったりして何もする気が起きない有様だった。
だが翌日は妻との約定を果たす為に朝早くから車を出して丸広百貨店入間店[公式]まで着実に到着せねばならないのである。幸いおれの手元にはこれまでに繰り返されたイベント出張から積み上げた持ち物チェックリストがあるので、それに沿って半ば機械的に荷造りを行い風呂に入ってビールを飲んで00:00過ぎには横になった。
高速で入間へ向かう
06:00過ぎにiPhoneのアラームで起こされる。入間まで下道を走った前回は05:00起きだったが今回は高速を使う事にしていたのでこの時間まで寝ていても問題無い。適当に朝飯を済ませてカーシェアで車を借りる為に06:45頃に家を出た。今回は宿泊を伴うため荷物が多くフリード[公式]を予約していたので、普段よりも遠いカーシェアステーションまで歩かなければならない。昨日は台風の影響で終日雨空だったが、雨は既に止んでおりひっそりとした朝だった。
さて行くかと思い車に乗ると、運転席には空のペットボトルが転がっており民度の高さを感じた。フリードには給電用のUSBポートが備わっているうようだが、壊れているのかケーブルを刺しても全く反応しない。こんな事もあろうかとシガーソケットから電源を取れる器具を持ってきたのだがこちらも同様に壊れており、余りの不吉さに出発前から完全に気が滅入ってしまった。
カーナビには鈴ヶ森IC[Wikipedia]から高速に入れとの指示が出ていたが、この指示は無視して浜川崎IC[Wikipedia]から横羽線に入った。今回のイベントは10:00開場のため09:00には目的地である丸広百貨店入間店に着きたいのだが、カーナビの到着予想時刻は09:15になっており、妻がこの時点でやや不機嫌になっていたからである。
美女木JCTの信号機
日常的に車を運転しない所謂サンデードライバーの大部分がそうであるように、おれも首都高を運転するのが嫌いだ。道幅は狭く唐突な合流が多くそれでいて速度も遅くない。その傾向が強い銀座の辺りを抜けた後に信号機に出会した。面食らったが確かにこの構造だと信号機無しには無理そうだ。調べてみると美女木JCT[Wikipedia]らしい。世の中は知らない事ばかりだ。
丸広百貨店入間店
丸広百貨店入間店到着
川越IC[Wikipedia]で関越自動車道[Wikipedia]を降り国道16号に出てカーナビの指示の通り進む。09:03には目的地である丸広百貨店入間店の荷物搬入口に到着した。前回は09:00到着だったので許容範囲であろう。荷物搬入は妻に任せおれは丸広に併設された立体駐車場に車を預ける事にした。
人間の記憶とは不思議なもので、丸広百貨店の建物を見るまでは全く見知らぬ景色の中を入っていた感覚だったのに、いざ丸広百貨店が視界に入った途端に、現実と記憶の中の地図が接続されて思い出せるだけの全てを思い出した。頭の中でカチッと音がするようだった。それもあり、やや分かりにくい場所にある駐車場入口まで迷う事無い辿り着く事ができた。
立体駐車場
立体駐車場は2Fまで買い物客専用エリアとなっており車は3F-Aに停めた。丸広へ向かう。
喫煙所
前回同様に社員専用の入口から入り守衛さんからゲスト用の入館バッジを受け取る。一度来ただけなのに手慣れたものである。だが入間の乱は諸般の事情で今回が最終開催であり、恐らくおれの人生では二度とここに訪れる機会は無いように思う。これまでに仕事の都合であちこちの現場に行ったが、その中にはここと同じようにもう二度と訪れない場所が沢山ある。当たり前の話なのだが奇妙な気持ちになった。そんな事を考えながら喫煙所で煙草を吸ってニコチンを補充した。
前回のハンドメイド即売会の会場は丸広4Fだったのだが、今回は7F催事場のさくら草ホールだった。慌ただしく設営を終えてさて開場と相成ったのだがどうにも客の入りが悪い。おれも妻に付き合ってあちこちのハンドメイドイベントに参加してきたので、成功しないイベントというのは始まった時に大体肌感覚で分かる。今回は明らかに「それ」であると直感が告げている。
國友公司「ルポ路上生活」
このまま19:00まで待つのは無理だと思ったので11:00頃に紀伊國屋書店 入間丸広店[公式]で何か本を買う事にした。家から何か文庫本を持って来ようと思っていたのだが忘れていた。そもそも家にある本は読み飽きてしまっている。悩んだ末にルポ路上生活[Amazon]を買った。候補としてはルポ歌舞伎町[Amazon]とルポ池袋 アンダーワールド[Amazon]があったのだが、軽く頁をめくるとどちらもあけすけに性的な話が多く途中で具合が悪くなりそうだったのでルポ路上生活を選んだ。
所持金が乏しかった学生時代からの習慣で、本は古本屋で安くなっている物を狙うか図書館で借りるかしていたのだが、考えてみると自分が買いたい本は何でもピカピカの新品の単行本を買える程度の稼ぎはあるのだ。学生時代が終わって既に20年以上が経過している。人生の残り時間も少なく小銭を惜しむ時ではないだろう。
購入したルポ路上生活は、筆者が東京で実際に路上生活者に混ざって2ヶ月間生活をした結果を纏めた本である。イベント初日が終わるまでに読了したが期待した通り中々面白かった。東京は炊き出しが多く意外にも食べる物には困らないようだ。
簡単に本の紹介をする。本作は以下の3部構成となっている。
- 東京西部編
7,000円と雑貨だけを持ってホームレス生活を始める。主に都庁下での生活になるが、ここでは24時間布団を敷いていても怒られないため快適のようだ。統合失調症なりかけの黒綿棒氏から色々情報を得て、順調にホームレス生活を滑り出している。徒歩圏内に炊き出しが多く、何を食べるかを選ぶ事までできる。 - 東京東部編
快適な都庁下を後にしてホームレスのメッカとも言える上野での生活。作者は大分メンタルを削られている描写があるが、手配師との遣り取りが面白い。令和の世の中で手配師という職業は健在のようである。需要あれば供給ありという所だろう。「東京東部編」と同じく炊き出しで食べ物には困らないが、都庁下と違い24時間過ごせる安心な場所が確保できずそこが辛いようだ。既に建てられているブルーシートハウスは存続OKだが、新規建造と不可というのも面白い。手配師の主導によるポケモンカードの買い占めや空き缶集め(アルミ缶しか売れずスチーム缶は不可)、韓国系キリスト教会が主催する会合へのサクラ参加等で、酒を飲む程度の現金収入は得られるというのも分かった。 - 河川敷編
住居を求めて最後に辿り着いたのは河川敷のテント生活であった。プライベートが欲しいというのではなく、「東京東部編」によると定住できずとにかく移動が大変に見える。
全く知らない世界の話なのでこういうルポを読むのは楽しい。満足した。
愛宕神社まで歩く
カットコムズ入間店
読書に疲れた頃に外に行く事にした。ここから徒歩で行ける距離に愛宕神社[Wikipedia]が鎮座している事は、前回の経験から学んでいる。暗くなってしまう前にひとつ参拝をしてこよう。そう思い丸広の外に出ようと1Fまで降りた所でカットコムズ入間店[公式]がある事に気付き、先に散髪を済ませる事にした。生来の無精で髪が伸び放題になっていたので、そろそろ床屋へ行かなければなと思っていた所である。
自宅近くの安い床屋は休日は大体いつも混雑しており面倒で自然と足が遠のいてしまう。週明け月曜に休みを取っているのでそこで行こうと思っていたのだが休日を潰さずに済んだ。ついてる。
故きを温ねる公園
散髪を済ませ外に出る。前回から変わらない風景だ。2枚目の写真は前回も行った故きを温ねる公園である。豊岡小学校の跡地らしい。午前中は雨が降っていたので酷く蒸し暑い。
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都内でよく見掛ける胡散臭さをインクにして印刷したようなポスターがここにも貼ってあった。
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試しに0120-964-775[外部]で検索してみたが情報が古い。今流行りの闇バイトの入口か偽装結婚斡旋か単なる振り込め詐欺か、いずれにせよ助平心で接触すると碌な結果にならないタイプの募集だ。
愛宕神社
10分程度歩いて[GoogleMap]愛宕神社に到着した。前回は裏口側から入ったがこちらが正面の参道だ。
灯籠
参道の階段と同様に灯籠も苔生している。刻んであるのは馬かな?
拝殿と狛犬
参拝をして前回のお礼と挨拶を済ませた後は境内に置かれている喫煙所で一服する。雨上がりで蒸し暑く蚊が多い。一本吸い終えるまでに何箇所も食われてしまった。煙草を吸っていると近所の工務店のものらしい車が停まりお年寄りの男性が参拝をしていた。地域に根付いた神社というのは良いものだ。
石灯籠と同じくらい苔生した渋い狛犬の写真を撮って境内を後にする。愛宕神社の他の写真は前回の日記にも多く載せているので、興味がある方はそちらを参照して欲しい。
入間の夜
庄や 入間店
初日の入間の乱は19:00に終わったが、売上は予想通りぱっとしないよりもかなり悪い結果に終わった。朝早くから移動してクタクタに疲れていたので晩飯を済ませてさっさと寝てしまう事にする。車を出して入間第一ホテル[公式]へと向かう。比較的遅い時間だったのでホテルの駐車場はほぼ一杯になっていた。危ない所だった。このくらいの田舎であれば路上駐車の取り締まりも緩いだろうと思われるが、勝手な思い込みで路駐して翌朝に切符を切られていたら朝から気が滅入ってしまう。
二人とも暇疲れでぐったりしていたので、チェックインする前に先に飯を済ませてしまう事にする。夕食は前回同様に、入間第一ホテルに併設されている庄や 入間店[公式]にした。大衆居酒屋なので料理の味は価格相応である。余りビールを飲む気にもならず二杯目はトマトジュースサワーにしたがこれは好みの味だった。
入間第一ホテル
部屋は前回同様にデラックスツインルームを取った。ここは部屋が広くソファーが置かれており寛げる。何より灰皿とマッチがあって煙草を吸ってくれと言わんばかりの設えが良い。順番に風呂に入って妻が長い髪を乾かしているのを後ろから眺めていると「リング」の呪いのビデオを思い出した。あの作品で一番怖いのは呪いのビデオの映像そのものだと思う。よくあそこまで気味の悪い映像を撮れたものだ。呪いのビデオの内容そのものは確か原作準拠だったと記憶している。
朝が早かったので早く寝たかったのだがおれはこういう時に寝付けない。01:15を回った所で急激な眠気に襲われたのでやっと眠れた。入間第一ホテルの詳細な写真は前回2023-03-11の日記を参照。
入間2日目
07:30過ぎに起きて朝飯を食べに庄やへ行く。和洋の定食から選べるが和食にした。普段の朝飯は面倒なので珈琲とベースブレッド[公式]で終わってしまう事が多いのだが、時間が許せばおれはパンではなく朝から米を食いたいのだ。
おれは納豆が好きではないので付けないで欲しい旨を伝えたのだが、店員の老婆の反応は極めて薄く意図が伝わったのかどうかかなり怪しかった。が、それは杞憂で伝わっていたようだ。腹一杯食べて新しい一日に備える。
有料ビデオ
さて話は変わるがビジネスホテルといえば大抵は有料チャンネルが用意されている。これは廊下やエレベータホールの自動販売機で買えるプリペイドカード(価格は1,000円で見放題という形式が多い)を買うと、部屋のテレビで大人向けの肌色が多い映像を好きなだけ見られるサービスである。チャンネルは概ね3つ。
入間第一ホテルには自販機が無いなと思っていたのだが、朝食を終えて部屋に戻って支度をしている際にこれに気付いた。まさかの現金を投入するタイプだった。確かに昔の旅館などはこの方式だったような気がする。
丸広百貨店入間店へ
さらば入間第一ホテル。前述した通り入間の乱は今回で最終回なので、このホテルで宿を求める事は恐らくもう無いだろう。
入間第一ホテルから丸広百貨店入間店は車で5分程度の距離である。二日目開始だ。
小田雅久仁「禍」
10:00に開場となったが本日も盛り上がる気配は乏しかったので読書をする事にした。何を読んだのかを個人的にずっと記録しているのだが今年は特に理由も無く読書をするモチベーションが著しく落ちており、昨日読んだ「ルポ路上生活」でやっと4冊目という惨憺たる有様である。思考は言葉によって成り立つものだというのがおれの考えだ。活字を読まないと語彙力が落ちて自然と思考の幅が狭まりどんどんアホになってしまう。という事で本日も本屋へ行く。取り戻せ人間としての矜持を。
今回は昨日気になっていたホラー短編集である禍[Amazon]を購入した。書店にポスターも貼られていたので色々と販促に力を入れているのだろうと思う。収録されている七作全てを当日中に読み終える事はできなかったので、残りは帰宅してから読んだ。以下で感想を兼ねて簡単な紹介をする。
- 食書
以降のコース料理のオードブルという感じ。魔女の立ち小便の描写がエロい。 - 耳もぐり
七作の内ではこれが最も上手に纏まっていたと思う。正統派ホラーで面白い。 - 喪色記
世界崩壊もの。幻想的。 - 柔らかなところへ帰る
胎内回帰で終わるのだが出てくる太った女の一族の描写がとにかく扇情的である。面白かった。 - 農場
題名の通りあるものを育てる謎めいた農場の話。これも面白い。 - 髪禍
入口は面白いのだが途中からブッ飛んでしまう世界崩壊もの。 - 裸婦と裸夫
筒井康隆が書くショートショートのドタバタを思い出させるギャグ。世界崩壊もの。
帯ではかなり煽っていたが正直そこまでの満足感は味わえなかった。然しホラー小説を読むなら和製に限る。
屋上喫煙所
煙草を吸えるのは社員専用の入口から入った所に備えられている社員用喫煙所だけかと思っていたのだが、開場である7階さくら草ホールと同じ階にある屋上に出ると灰皿が用意されている事に気が付いた。一般客も入れる場所なのでここが丸広百貨店入間店の正式な喫煙所になるのだろう。
夏の終わり
日差しが強く相変わらず気温は高かったが、八月の凶悪な暑さは鳴りを潜め、ひっそりと秋が忍び寄っているのが感じられた。おれの人生でこの場所に来る事は二度と無いだろうと思い何枚か写真を撮る。
結び
ハンドメイド即売会は18:00に閉場となったが、二日目は初日よりも更に客が少ないまま終わってしまった。ハンドメイド即売会以外の会場はこれまでのように賑わっていたようだが、即売会はイベント最終回にしては余りにも寂しい状態だったと思う。売上の数字としては前回・前々回の半分以下である。お客が来なければ何をしても無駄だ。
これまでは丸広百貨店入間店4階の展示場を借りての開催だったため、イベント目当てではなく丸広に買い物に来ていた一般のお客にもリーチしていたが、今回は会場が7階に隔絶されており、更に入場料として500円を取っている。無論、入場料を取る行為自体を否定するものではないが、それはあくまで数百数千のブースが出店するような大規模なイベントの場合に限ると考える。お客は入場の際にお金を払った対価として多くのブースを見て回るというアクティビティを得られるケースだ。今回の規模では難しいだろう。出店料は他に比べるとかなり安かったが、いっそ出店料を倍にして出店者側からコストを回収するようにして欲しかった。繰り返しになるがお客が入らなければ手も足も出ない。
帰りも川越ICから高速を使ったのだが、カーナビに提案されたのは昨日とは別のルートだった。やたら長いトンネルを通る。後で調べると山手トンネル[Wikipedia]だった。
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